昨年の夏頃、この貼り紙を教室の窓に貼ったら、懇意にしている近所の英語教室の熊代先生がフェイスブックに掲載してくださいました。もっとも、この貼り紙はもう一つの窓の貼り紙とセットで、「テストの点は変わりません。考え方が変わります。」というものなのですが、熊代先生はこちらの貼り紙だけを取り上げて、「成績ばっかり気にするから、通り一遍のことしか教えられないのではないの?・・・・・・一本筋を通して、開設以来ずっと同じ姿勢で教え続けておられるいはら先生。お見事です。」と書いてくださいました。これを見て、恥ずかしくなりました。
一本筋を通すどころか、こちらは開設以来ブレまくりです。授業料はもう4回も変わっています。授業時間も時間割も変わっているし、授業内容も毎年少しずつ変わります。変わるのは想定外のことが次々現れてくるからですが、そもそもの私の想定が甘いということでしょう。
「テストの点は変わりません」というのは、「成績や合格に関心はありませんよ」ということでは、もちろんありません。国語の学習がテストの結果として反映されるには時間がかかる場合が多いので、すぐにテストの点数が上がると思ってもらっては困りますよということを、ざっくり「点数は変わらない」と表現したものです。こう表現した方が、インパクトが強いだろうと考えたのですが、塾の宣伝としてはどうも+にはならなかったかも知れません。塾の前を通る方が貼り紙を見て、笑う様子を見たのですが、「指導の理念」というよりは「開き直り」ととられている可能性が高そうです。こちらからすると、「点数が変わらないわけなかろう。言外の意味を考えて!」というのが本音なのですが、世の中には、広告の宣伝文句を字面どおりに受け取る人も多いのかも知れません。
しかし、例えば「○○中学、○○名合格!」はいったい、全部で何名の生徒が受験したのか明らかにしていませんし、「合格率○○%」も、第一志望は合格する可能性が低いから第二志望の学校に受験先を変更するといったことをするのとしないのでは(もちろんそれは進路指導としては間違っていないと思いますが)変わってきます。「点数○○点アップ」も、アップ後その点数を維持し続けているのかどうか、一度もダウンしなかったのか、明らかではありませんし、すべての生徒がアップしたのかどうかも明らかではありません。
国語の点数に関して言えば、学校の定期試験の国語は概して問題数が多く、一問あたりの配点が低くなっています。そうしないと、出来た人と出来なかった人の得点差が大きくなるので仕方のないことではありますが、そうなると漢字一字書けただけで2点、80字の記述問題を完璧に答えても5点といった結果になり、漢字3問とれた人は、記述問題1問とれた人よりも得点が高くなります。実際には記述問題が完璧にとれるような人は、漢字もよく出来る人がほとんどですから、上記のような極端な例は少ないとは思いますが、記述問題はすべて空欄のままだったとしても漢字や選択問題、抜き出し問題などを完璧に答えれば、70点から80点くらいの点数をとることは可能です。実際、当教室の中高生に定期試験の答案用紙を持ってきてもらうと、記述問題はほぼ手つかずといった生徒がいます。試験というのは時間制限がありますから、時間のかかる記述問題は後回しにして漢字や記号問題を先に解くという方法は間違いではないと思います。ただ、いつもこういう形で、国語の点数が70点ぐらいあるから、まずまずというとらえ方は危険です。
点数というものは、問題内容と配点によって、かなり変わってくるものなのです。だから、テストの点数だけでは、国語力は判断できないというのが私の考えです。また、問題の難易度や分量によっても点数は変わりますから、A校で80点の生徒よりもB校で50点の生徒のほうが実際には国語力があるということは充分考えられます。大学入試を念頭に置くなら、少なくとも全国模試を受けて、その点数で国語力を判断するべきであって、学校の定期テストの点数がよいからといって国語が出来ると考えるべきではないと思います。さらに言えば、目指す大学によっても必要とされる国語力は変わってきます。国公立の医学部や東大・京大・阪大、あるいは慶応・早稲田といった難関私立は、国語力なくして攻略できません。試験に個別試験に国語がない理系志望だとしても・・・です。
意外と意識していない人が多いのですが、どの教科も多くの場合、設問は日本語(=国語)で書かれています。そして、問題が解けない理由の一つとして、設問が正しく読めていないということはよくあることなのです。国語で伸ばすべきは、点数だけでなく、設問を正しく読み取り、筋道立てて考える力です。そこに気づかずに、点数だけを見ていたら、肝心なところで足をすくわれます。
もっとも、こういうことを貼り紙で伝えられない私にも国語力のうちの「何か」が欠けているということでしょうから、あまり偉そうなことは言えませんが・・・・・・(笑)。
2021-04-01 11:35:17
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